はやて×ブレードドラマCDVol.3発売記念 

アンオフィシャルCMSS〜玲紗枝編1ver.

 

 

 

「紗枝、これ・・・」

「ん?」

玲が差し出した四角い物体に紗枝は小首をかしげる。

 

「給料3ヶ月溜めて買ったんだ・・・受け取ってくんねーか?」

どこか不貞腐れているようにも見える玲の表情が実はテレ隠しである事は分かっている。

差し出された四角い箱状のものを受け取って紗枝は微かな上目遣いで玲を見遣った。

「貰っていいの?」

「ああ、約束してただろ。ちょっと遅れちまったが受け取ってくれ」

ポリポリと人差し指で頬を掻きながらあらぬ方向へ視線を走らせた玲が

そっけなく付け加える。そんな玲の様子に微かに笑みがこぼれる。

「ありがと」

多少遅れたとしても約束を守ってくれた事が素直に嬉しい。

そもそも約束を覚えてくれているかも不安だったのだから。

 

「開けていい?」

「ああ」

高鳴る胸とはやる気持ちを抑えながら包装を解くと中からケースが現れた。

そっと指を伸ばしてケースをゆっくりと持ち上げる。

中から現れ、キラキラと光を乱反射する銀色の物体に紗枝は目を細めた。

 

「なかなか綺麗にできてるだろ」

「そうね。デザインも可愛いし」

そう言いながら紗枝は指を伸ばして銀色に輝くそれを台座から外した。

 

「ねぇ、ちょっとしてみてもいい?」

悪戯っぽくほほ笑んだ紗枝に今度は玲が首を傾げる。

「はぁ?してみるって言ったってここじゃプレイヤーも何も・・・って、ばっ!何してんだ紗枝!」

「ん〜入らなくはないけどちょっとキツいわね〜。それに縁が大きすぎてちょっと邪魔だわ」

「ったりめーだろーが!てかそれ指輪じゃねーし!CDだしっ!!

しかもおま、なんっで左の薬指に嵌めてんだコラ!!」

「え〜ヤダ玲、左手薬指の指輪の意味とか知ってるくせにぃ・・・」

「ああっ!?やめろ!くるくるすんなくるくる!指紋付くだろ・・・

つーか縁があたったら指切れるだろーがっ!?貸せっ!今すぐ外せっ!」

「やぁん玲、私の指輪とらないでぇ!」

「ゆ・び・わ・じゃ・ねーっつーの!!」

 

何がそんなに楽しいのかころころと笑いながら玲の伸ばした手を避ける紗枝。

さすがにSランカーだけあってその動きは素早い。

「この、くそっ、ちょろちょろ、しやがっ、て・・・っだー!!」

おちょくるような紗枝の動きに痺れを切らせた玲は動き回る末端ではなく

元を抑える事に決めたようだ。

「大人しくよこせっつーの!」

「・・っ、ちょっ、玲!」

背後から圧し掛かるようにがしっと回された玲の腕に首と肩をホールドされては

流石の紗枝も動揺を隠せない。

背後に密着した玲から微かに爽やかな香水の香りが届いてさらに動揺を煽る。

「ったく手間かけさせやがって・・・」

一瞬動きの止まった紗枝に対し、

この体勢をまださっきのじゃれ合いの延長ととらえているのか玲の声は冷静だった。

肩を掴んでいる方とは逆の腕を伸ばして紗枝の手を手前に引き寄せると、

指に嵌めたままだったCDを外す。

まるで警察に取り押さえられた犯人のようだ。

あるいは強盗犯に人質にとられた一般市民か。

どちらにしろひどく緊張するという点では共通している。

未だ閉じ込められている玲の腕の中で

紗枝は出来るだけ冷静を保てるようそんな分析をしていた。

 

「ああっ!?ホラみろ、ここんとこちょっと汚れたじゃねー・・・か・・・」

紗枝の指から抜き取ったCDを検分しながら

ようやく自分たちのとっている体勢の危うさに気づいたらしく玲がおずおずと身体を離した。

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・なんだよ」

「・・・べつに」

黙っている紗枝を心持ち赤く染まった顔で玲が睨む。

「ケースよこせ」

「はい」

手にしたままだったケースを玲に差し出す。

ケースを受け取ると玲はふい、と横を向いてCDをケースの中に仕舞い始めた。

「・・ったく、こんなん指輪にするとかバカじゃねーか」

ぱちん、と蓋を閉めながら呆れたように玲が呟く。

「あは、ちょっとした冗談、お茶目でかわいいボケじゃない」

玲のクールな反応に内心少しだけ傷ついたけれどそんなのは決して顔にはださない。

 

「ほら」

「ん。ありがと・・・」

差し出されたCDを受け取る。

四角い透明なプラスチックケースの中のそれは、もう特別な意味も指輪でもないただのプレゼント。

なんとなくほろ苦いものを抱えながら手の中のそれを弄ぶ。

 

「そのうち・・・」

「え?」

ぽつり、と玲のこぼした呟きに顔をあげる。

「あー、だから、あれだ・・・今すぐは無理だが・・いつかちゃんとしたやつ買ってやるから」

口元に手を当てて言いにくそうに言葉を発する玲を見つめる。

「だからそんなもん、指輪の代わりにすんな」

「玲・・・」

それから玲は首の後ろをガシガシ掻いて、紗枝の視線を避けるようにそっぽを向いた。

紅く染まっていくその横顔に紗枝の胸がじわり、と熱くざわめいた。

「ほら、せっかく買ったんだからとっとと帰って聞こうぜ、そのCD」

照れくさいのか早口にそう言って、さっさと歩きだした玲の後ろ姿を見つめた。

 

『いつかちゃんとしたやつ買ってやるから』

玲の声が頭の中でゆらゆら揺れる。

「ちゃんとしたやつ」と、玲は言ったけれど。

それは単に正真正銘の指輪を贈ってくれるという意味だろうか。

それとも何か、改まった意味のある指輪、という意味だろうか。

キラキラと光を跳ねるCDを見つめながら紗枝は立ちつくす。

 

 

そんな“いつか”ははたして来るのだろうか。

 

 

 

来て欲しい、と紗枝は願った。

どんな意味でも、意味などなくても、

玲が約束を果たしてくれるその時までせめて隣にいたい。

 

 

「紗枝?なにしてんだ早く来いよ」

「ん」

こちらを振り返った玲の声に小さく笑顔を返して止まっていた脚を動かす。

四歩と行かずに追い付くと、付かず離れずのいつもの距離を保った。

 

「何ぼけっとしてんだよ」

「ん?CD、楽しみだなーと思って」

「はっ、そんなCDごときで・・・紗枝も意外とガキだな」

「あー失礼ねー。玲だって楽しみにしてたくせにー」

 

果たされた小さな約束の欠片を右手に掴んで。

叶わないかも知れない未来の約束を胸にしまって、紗枝は笑った。

 

もしもこの笑顔が歪んでいたら

手にしたCDの反射が眩しかったせいにしよう、と紗枝は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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